或る花芽の生涯
今度こそ俺は最高のりんごにっ!
平成17年10月14日
~ふじの葉摘み作業が忙しく行われていた青森県弘前市の林檎園で、就農2年目の男が一人
「折っちゃおうかな~♪」りんごの横にある長さ5cm、直径5mm程の枝が邪魔だったらしい。
「ちょっと待て!俺は今度こそやってやる!」どこからともなく声が聞こえた。
男がよくその枝を見ると、元のほうには今年花を着けたと思われる『花台』があり、先にはえらく立派な葉を着けた芽が着いていた。~
というわけで、私はこの花芽の1年間を観察してみることにしました。
地上高約1.5mのところなので冬に雪害でこの企画があっさり終わらないことを祈りつつ、接木テープで印をつけて写真をパチリ!どうなることやら・・・。
平成18年2月20日
ん~、確かこの辺だったような?
間違いない!ここだ!
ハイ、完全に雪の中に埋もれています…。
掘り起こすのは逆に傷をつけてしまう場合があるので、融雪資材をパラパラ撒いておきました。
生きてるかぁ!?
平成18年4月14日
園地には未だ残雪が見えますが、樹の雪に隠れている部分はなくなりました。
あわただしく剪定作業をすすめながらアイツをパチリ。
なんとか欠けることなく生き残ったようです。
ただ、長いこと雪の中に埋もれていたことによる影響は多少あるかも…。
まあ、とにかく無事でよかった!
平成18年5月6日
発芽、そして展葉。
雪の影響で少し遅れているけどもなかなかのやる気っぷり。
私もなんとか剪定を終わらせることができました。
気を抜く暇もなく花が咲くのを迎えます。
つーか、こんな写真撮ってる余裕がないんですけどネ。(汗)
平成18年5月21日
あー満開だっ!というより少し過ぎてる。
真ん中の花ではなくて、本主人公は右下を向いているヤツです。
花びらはすでになくなって、ガクとオシベだけ見えます。
受精能力に異常がなければガクが立ってきて『実立ち』するはず。
今はまだガクが開ききっているのでわからないです。
平成18年6月3日
実立ち!
前述のとおりガクが立ってますね。ついでに言うと、ツルもくるりと上を向きます。
見事に受精されりんごの実になりそうです。
普通の花芽(弱小芽を除く)は5~6個の花を咲かせ結実します。
コイツは4果しかないので、きっと雪の影響がこんなところに現れたのでしょう。
おまけにメインとなる中心果が少し変形っぽいです。
まぁ、雪の中から生還できただけでもよしとして、その中心果だけを残し周りの側果や
弱小芽果を『実すぐり』しまーす!(下の写真)
平成18年10月18日
上の写真は上っ面。下の写真はケツ側。
お分かりでしょうか?かなりの変形果です。
花の時期にメシベに何らかの障害があったのでしょう。
普通5~6個の種子の部屋みたいなのがあるのですが、そのうち2~3個は受精不良みたいです。
こういう果実は良品にはなり得ないので実すぐり時期に落とされてしまいます。
昨年の今頃に見せた意気込み?残念ながら成就されず。
良い素質をもっていながら良果になれず…。このような花芽はたくさんあります。
自然災害、農作業中事故、それをかいくぐりさらに好条件に恵まれた花芽だけが生き残り、生果として食卓へ上がることができます。
まさにjacknick強shock!(意味不明…)というわけです。
収穫後のアイツ
割ってみると種の部屋5つあるうち2つは種がない。
1つはなんとか種がひとつ。2つは2~3個種がありました。
全部でたったの6個~!。
立派なものはその3倍くらいは種があるというのに…。
悲運なお前は私がムシャムシャ・・・・・・・、美味かった!
或る花芽の生涯 <完結>
あど、ねーはんで・・・